日本一の埴輪出土数を誇る群馬県。
その姿かたちは多種多様で精巧、当時の人々と現代の私たちを繋いでくれるメッセンジャーと言えます。
そんな彼らと出会える施設を、興味深い点について触れながら紹介していこうと思います。
新たな発見や通じるものを見つけた時、あなたの時間はより豊かなものへとなっていることでしょう。
埴輪大好きな管理人がお届け!
【高崎市】群馬県立歴史博物館
広大な森林公園『群馬の森』に併設された文化施設として当館はあり、国宝・国指定重要文化財に指定された埴輪が大きな目玉として展示されています。
こちらに展示された品々は全て、博物館から車で10分ほどの場所にある『綿貫観音山古墳』にて掘り起こされました。
埴輪群像の造形の豊かさ、その大きさ(どれも優に1mを超える)はもちろんのこと、造りの丁寧さや正確さに驚かされます。
写真左「両手を腰にあてる振り分け髪の男」は名前の通り、左右に大きく沿った振り分け髪が特徴的ですよね。
顔の横にあるのは下げ美豆良
身分の高い人物がしていた髪型なんだよ
豊かな髪にも目を引かれますが、よく見ると耳・首飾りに鈴付きの帯、さらに上衣の裾にも鈴を付けて随分と飾り立てていることに気が付いたでしょうか。
ゆったりとした下衣の袴は膝の高さほどで蝶結びにしており、上部のみに蕨手文(曲線の先端が巻き上がった文様のこと。植物の蕨に似ていることから)が描かれていたりと見所も多いです!
華美な服装に堂々とした立ち姿から、埋葬者である王の着飾った姿を表現していると考えられており、納得の風体と言えます。
また、写真右手「甲冑をまとう武人」は、対照的にシンプルながら小札甲(小札と呼ばれる鉄板片を糸で連結して作られた鎧のこと)を身にまとっている様が丁寧に書き表されています。
太刀を帯から下げ、左手には弓・背には靫(矢の入れ物)を背負っています。
徹底して武装している様子は先に紹介した「両手を腰にあてる振り分け髪の男」とは真逆に思えるかもしれませんが、実は同一人物なんじゃないかとも言われているんですよ。
ところで、恐らく誰もが目を向けるのは頭上に主張する兜ではないでしょうか。
これは突起付冑と呼ばれているもので、実物が同室内に展示されているため見比べてみてください。
突起部分は冠であるとされ、似通ったものが朝鮮半島から発見されています。
というのも、当時の6世紀後半頃は、朝鮮半島から様々な品々や技術が流入しており、それらの影響が顕著なのが綿貫観音山古墳出土品の特徴でもあります。
背面までぐるりと見ることが出来るため、訪れて頂いた暁には、背中までよく観察してみると新しい発見があるかもしれません。
開館時間 9:30~17:00(最終入館16:30迄)
休館日 月曜日(祝日・振替休日の場合はその翌日)、年末年始
入館料金 一般:300円 大学・高校生:150円 中学生以下:無料
(企画展示は都度料金改定有り)
【高崎市】かみつけの里博物館
ここでは再現された前方後円墳『保渡田八幡塚古墳』を見ることができるだけではなく、その上を散策することも可能です!
円墳部分は急斜面だからね、
履きなれた靴で行くこと!
規模の大きさに圧倒されるとともに、並べ立てられた円筒埴輪が目を引きますよね。
その数なんと6000本!
この点においてだけでも、当時の古墳建設事業が一大プロジェクトであったことは想像に難くありません。
ちなみに発見当初は大多数の埴輪が失われていたとのこと。
復旧にあたった方々には感謝せねばなりません…!
さて、埴輪は古墳上にあってこそ、本来の用途を発揮し得ると言えるでしょう。
円筒埴輪は、儀式を行う上で使用された器とその台であったものが変化していったものであり、朝顔形埴輪にはそのような面影がよく表れています。
これらは、古墳と言う聖域と外界とを隔てる役割を持つとされています。
埴輪を並べることによって古墳の荘厳さを演出し、埋葬者が重要な立場であったことをより示唆していると考えられています。
それをより助長しているのが、物語性を持つ埴輪の配置です。
写真は儀式の様子を表した埴輪群の館内展示です。
これらは古墳でも特に外部から目に付きやすい場所に置かれ、人々の目を意識して作られたと考えられています。
手前左の「甲冑を着た武人」はそれらを守るように他の埴輪へ背を向け、王を中心に巫女や力士、飾り馬などが並べられています。
王位の継承儀礼の様子か、はたまた神祭とそのための狩猟という2つの儀礼場面を表現しているとする説が挙げられています。
実際に見て頂き、古代の人々が表現しようとした物語を自分なりに想像してみるのも楽しいですよ。
また、ここには貴重な「鵜形埴輪」が展示されているんです!
くちばしに加えた魚を高く掲げる様は躍動感溢れ、水飛沫さえ見えてきそうな勢いがあり、且つその表情はどことなく誇らしげにも見えますね。
つい微笑んでしまう愛らしさ
鵜の埴輪は非常に珍しいものとなっており、明快な作成意図は分かっていません。
ただ、この鵜は首元に鈴を付け、人の管理下にあったことは確実であり、鵜飼いが行われていたことを証明する国内最古の資料と言えます。
別の地域ではありますが、鵜を抱えて埋葬された女性が見つかっていたりと、当時人々にとって身近な存在だったことが考えられます。
こちらでは他にも、人間と様々な関わり合いをしてきた動物たちの埴輪が展示されていますので、併せてその豊かな表情に注目してみることをおすすめします。
開館時間 9:30~17:00(最終入館16:30迄)
休館日 火曜日(祝日・振替休日の場合はその翌日)、年末年始
入館料金 一般:200円 大学・高校生:100円 65歳以上・中学生以下:無料
(企画展示は都度料金改定有り)
【藤岡市】藤岡歴史館
群馬県内の埴輪生産において一大拠点となっていた場所の一つが、現在の藤岡市です。
『本郷埴輪窯址』(藤岡歴史館から車で20分弱)は、5世紀後半から6世紀末まで操業しており、先に紹介した『綿貫観音山古墳』『保渡田八幡塚古墳』の埴輪はこの地で焼かれたものだとか!
藤岡市では埴輪を作る時に欠かせない良質な粘土が手に入ったため、生産の場として適切だったとされています。
藤岡歴史館から徒歩10分の場所に、6世紀前半の古墳としては東日本でも最大級を誇る『七輿山古墳』があります。
その上に何万本と並べられていたとされる円筒埴輪「7条突帯普通円筒埴輪」は関東圏でも特別大きな円筒埴輪として知られており、埋葬された人物が重用されていたことがうかがい知れます。
写真中央がその発掘されたものになるのですが、名前の通り7本の突帯(出っ張った帯のようなもの)が取り付けられ、高さはなんと136㎝にも及びます。
これらは畿内で発掘されているものと類似しており、関東圏での出土は『七輿山古墳』のみ!
『日本書紀』によれば、藤岡市周辺と推定される場所に屯倉(朝廷の直轄地)が設置されていたという記述があり、重要な拠点としての背景がこのように投影されたとも考えられます。
もし大阪府などの博物館に、
行ったことがある人・これから行く人は見比べてみてほしいな!
ところであなたは『群馬HANI-1グランプリ』をご存じでしょうか。
2018年に実施された群馬県の埴輪200体による人気一位を決した投票イベントです!
ここには晴れて頂点に輝いた「笑う埴輪」が籍を置いています。
なんて屈託のない笑顔なんだ…!
群馬県の大スターと顔見知りにいなるのもまた一興ですね。
そして、ミステリアスな境遇に想像を掻き立てられてほしいと思います!
というのもこちらの埴輪、見た目からその正体を推測することがとても難しくなっています。
腕も見つかっていない上に、頭や首周辺には剝がれたような跡があり、初めからこの姿ではなかったよう。
唯一の情報源であるその笑顔は友好的で柔和にも受け取れますが、当時としては表情に魔除けの意を持たせることも多々あったので、一考の余地ある笑顔なのです。
開館時間 9:00~17:00(最終入館16:30迄)
休館日 年末年始
入館料金 無料(企画展示は都度料金改定有り)
【伊勢崎市】赤堀歴史民俗資料館
ここでは県内有数の大きさを誇る「馬形埴輪」や精巧に作られた「鶏形埴輪」などを見ることが出来ます。
数々の器財埴輪も面白いのですが、それらと比べてもかなり大きい「馬形埴輪」は6世紀中頃に作成されたものとされており、すらりと長い足がひときわ目を引きます。
スタイル抜群ですねぇ
馬は当時の有力者にとって最新鋭の移動手段であり権力や富の象徴でした。
祭事の際には鈴や杏葉と呼ばれる飾りを惜しげもなく飾り立て、財力を主張していたそうです。
埴輪にもその描写が事細かに表現されており、ほかの動物埴輪とは一線を画す煌びやかさがあります。
群馬県は朝廷の勢力拡大において重要な要衝地であったために豊かな権力者がこぞって馬の埴輪を作らせたのは当然と感ぜられます。
県内の動物埴輪はほぼ90%が馬形埴輪。
一つとして同じものはないため、お気に入りの埴輪を探してみるのも楽しいですよ!
『赤堀茶臼山古墳』から発掘された「鶏形埴輪」は精巧に雄鶏の特徴を捉えて作成されています。
鶏は古来から神聖な生き物として各地で早くから作成されているものの、全体の復元まで至らない、僅かな破片しか見つからないことが多い貴重な埴輪でもあります。
そんな中、ここまで完全に復元が可能だった例は貴重であり、その上この埴輪にはもう一つ驚くべきエピソードがあります。
『釜ノ口遺跡』にて羽の一部が見つかり、ぴったり破片が一致したというのです!
基本的に埴輪の作成場所を特定するには、使用された粘土や混ぜられた砂利などの成分から地域を割り出したり、地域に根差していた埴輪工人の癖によって推測していく場合が多いもの。
このように、物的な証拠によって生産地が判明することは非常に稀であり、大変興味深いことです。
運ぶ途中で取れちゃったのかな?
おっちょこちょいな人が居たんだな~
開館時間 9:00~17:00(最終入館16:30迄)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、臨時休館日有り
入館料金 無料
【渋川市】群馬県埋蔵文化財調査センター
最後に紹介するのは、群馬県内各地にて発掘された遺物を数多く収蔵する施設です。
こちらでは、約3万年前の旧石器時代から江戸時代の終わりまで、様々な出土品が年代ごとに並べられています。
私達へ脈々と続く歴史を伝え、埴輪もその一員として静かにあなたを出迎えてくれます。
多種多様な埴輪が一堂に会する様は圧巻の一言に尽きますよ!
椅子があるので是非座って眺めてみて!
贅沢な時間になること間違いなし
さらに奥へ進んでいくと……
これでもかと遺物が並べられた棚が整然と並べられています…!
ちょっと怖いくらい近くで観察することが出来るので、細部まで堪能して頂きたいなと思います。
また、発掘場所が明記されているため、群馬県内にお住まいであったり馴染みのある方は、見慣れた地名に驚くかもしれません。
開館時間 9:00~17:00(最終入館16:30迄)
休館日 土曜日、祝日、年末年始(収蔵展示室は日曜日も閉室)
入館料金 無料
おわりに
群馬県では、たくさんの埴輪たちと出会えることが出来ます。
見た目のおもしろさだけでなく、様々なことを教えてくれるお喋りな一面もあります。
そんな埴輪の魅力を少しでも伝えられていたら嬉しいです。
また、群馬県へお越しの際は車を利用することをお勧めいたします。
公共交通機関も利用可能ですが、車での移動の方がアクセスがスムーズ!
今回ご紹介した施設へ向かうにも便利です。
是非、会いに行ってみてくださいね。
以上、代居ナタでした!
コメント